会計事務所に勤めている人、特に、それなりな立場でそれなりな経験を積んだ人は、総勘定元帳人間である、といえます。今回は、そんなことをば。
だいぶ前に、村田沙耶香さん、という方が執筆した「コンビニ人間」という小説があります。コンビニ人間のあらすじとしては、主人公がコンビニの店員として長期間にわたって勤めており、それが彼女にとっての天職だ、という話です。特に、コンビニの商品の配列等々により、どんな仕入れをするか、とか、状況ややるべきことがすーっと見えてくる、それが、あたかも、コンビニが自分に語りかけている、ということで、コンビニ人間という題名に繋がってきているわけです。
会計事務所に勤めている人もこれに近いものがあります。総勘定元帳を、ザーッと見ていくと、それだけで色々なことがわかります。たとえば、会社の経理レベルがわかります。やっぱり、経理能力が高い会社は、元帳の記入も適時に秩序的に整理された状態で行われます。逆に経理レベルが低いところは記帳のタイミングも遅く、整理されておらず、わかりにくい、ということがあります。
また、取引の内容もわかってしまいます。特に、長きにわたって、監査をしている関与先の帳簿であれば、いつも出てくるような項目であれば、「ああ、こんなものね」と、おおむねの妥当性が判断できます。逆に、普段出てこないような項目、それは、金額、取引先、摘要なんかを見て、判断しますが、そういうところだけ、内容を聞いたり、証憑をおったりして確認する。それだけで、だいたい、帳簿入力の良し悪しが判断できたりもします。
なので、取引記録をチェックするだけが監査ではなく、総勘定元帳を科目別にザーッと見ていくだけである程度の心証を得ることができます。どこまで、それで片付けるかは、監査担当者や会計事務所の方針や力量で変わってきます。まさに、総勘定元帳が会社の状態や取引の内容を語ってくれるので、それをきちんと聞きとることができる人が熟練した監査担当者であり、まさに、総勘定元帳人間と言えるのです。