これで、7回目となる国際税務についてまとめてみました、シリーズ。ここでは、2重課税を防ぐ直接的な仕組みである、税額控除について語ります。
税額控除の意義
税額控除とは、企業が外国(非居住国)で納付した税金について、本国(居住国)で支払うべき税金から差し引ける制度です。
例えば、外国から受取利息を例にとると、まずは外国において当該利息に対して源泉税がかかります。その後、当該企業の課税所得計算において当該受取利息は益金に算入されてしまいます。つまり、外国においても税金が取られ、本国においても税金が取られてしまい、利息に対して2重課税が生じることになります。そうなると、誰も外国にお金を貸そうとはしませんよね。それを防ぐために、当該受取利息にかかる源泉税分を本国に対して支払う税金から控除できる、というのが税額控除です。
もちろん、源泉税だけではなく、恒久的施設により外国に納付した税金についても税額控除を採用することができます。
税額控除の限界
とはいえども、税額控除があれば全ての2重課税について問題が解決するわけではありません。具体的には、本国側で支払うべき税金がない場合。この場合は、控除したくても控除できないので、外国にて払った税金はそれっきりになってしまいます。
また、国によっては税額控除について一定の限度が設けられており、その限度を超える部分は税額控除ができません。この場合も、外国で払った税金を本国側で取り返すことはできません。
控除枠について、繰り越すこともできるのですが、繰り越し期間については制限がある場合もあるので注意が必要です。
税額控除以外の方法
2重課税を解消するための方法としては税額控除の他に外国から獲得した益金を課税所得計算から控除するという考え方があります。益金不算入という制度は、上の受取利息の例でいうと受取利息を益金から除外する、ということになります。この場合でも課税所得は減らせるので2重課税の排除にはつながります。
制度上は税額控除方式が採用されていることが多いように感じます。
まとめ
税額控除という制度により2重課税をある程度回避することはできます。ただし、この制度は完全ではないため、やはり、恒久的施設 / 源泉税税率といった外国側での課税関係も踏まえたうえでタックスプランニングをするのが適切でしょう。
なお、今回は税額控除考え方を説明することを目的としているので、具体的な制度の説明は割愛します。日本における税額控除の制度については以下をご参照ください。