さて、7回目の今回は食事情についてとりあげます。オーストラリア牛、日本でも人気ですが、それが中国に流れている、というところから中国の国際的な位置づけの変遷を見てみます。
オーストラリアの牛が中国に輸入されるぞ
中国人が裕福になり、より品質が高く、安全性や透明性の高い食品に対する需要が増加してきました。その影響により、オーストラリア牛の中国への輸出量が年々増加しています。昨年、オーストラリア牛の重たる輸入者は、日本、USA、韓国、シンガポール、中国でした。特に中国では、2011年には8,000トンだった輸入量が、2016年ではなんと94,000トンにもなっています。このようなオーストラリア牛に対する需要の急激な増加はオーストラリア牛の価格の高騰を示しています。
記事中では、中国に牛肉の輸出を図る何人かのオーストラリア人について事例としてとりあげています。例えば、レネハルトさんは800,000頭もの生きた牛を中国南部に輸出する計画であることを発表した。この輸出は2019年には開始される見込みである。従来は、オーストラリアで塗擦してから輸出していたので、この計画については色々な批判もあるが、それはそれとしてこういった計画もある。このように、オーストラリアでは急増する牛肉への需要に対して、キャッチアップに苦労しつつもビジネスチャンスととらえて輸出にはげもうとしています。
親記事リンク:australia set to beef up meat exports to china
世界の工場から世界の市場へ
従前は中国は「世界の工場」といわれていました。だいたい2000年代初頭の頃の話でしょうか。その時は、安い人件費と当局による積極的な外資誘致策(今はないのですが、かつては二免三半減などという税金優遇がありました)をとったことにより、日本をはじめとする各国が中国に進出し、そこで製造活動を行うようなりました。そのような流れで、中国では製造業が盛んとなり、経済的に発展するようになりました。
その経済発展に伴い、ある変化がおきます。そう、中国における労働力がひっ迫し、それにより人件費があがるようになりました。確か、僕が中国にいた2007年頃には人件費の上昇率は10%を超えていたと思います。また、中国政府も、外資企業より内資企業の育成に力を入れるようになり、外資向けの優遇策はどんどん減ります(二免三半減も2007年頃に停止され、今では影も形もありません)。こうなると、徐々に製造業での中国への進出ということは減るようになってきます。
では、中国はどう位置付けになったか、というと、「世界の市場」となります。10億を超える人口、経済成長による富の蓄積、高級品を求める嗜好の変化、等々あり、購買力が非常に高い状態です。こんどはそれを狙い、販売業や飲食業の進出が多くなるようになってきます。また、海外からの品質の高い物品の輸入も増加します。今回のオーストラリア牛もそのような流れの中で輸入量が増大している、ということができるでしょう。
このように中国はかつての「世界の工場」から「世界の市場」へ役割を変えつつあります。もちろん、すでに進出した製造業で進出した会社は、そこで製造活動をつづけますし、中国全土というより沿岸部での話があるので、内陸部のほうは、まだ工場としての機能を持ち続けるのかもしれません。ただ、大きな流れとしては、このような国際経済の中での役割の変化、ということは進んでいくことでしょう。