中国と台湾、香港、それぞれ微妙な関係にあります。中国は、台湾、香港への影響力を拡大させたい、と思っているようです。以下の取り上げる記事にもそんなことが書かれています。
記事の要約
中国は台湾、香港の2つについて、統治権を強めようとしており、その一環としてメディアに対する統制を強めている。ニュース会社である新華社は、台湾と香港に対する統治権を強めるために、報道ガイドラインを改正した。
当該ガイドラインは、先週までに新たなルールを57追加し、その主なものは台湾、香港に関するものである。例えば、台湾は、中華民国(Republic of China, RoC)とは呼んではならない、台湾政府ではなく、台湾のリーダーという言葉を使うように指示している。香港については、1997年の香港の返還について「主権の譲渡(sovereign handover)」ではなく、「主権の回復(the resumption of sovereignty) 」といように変化させると。
つまりは、この規制は政府による情報統制を強め、政府にとって都合のいい報道がなされるためのものだとされている。専門家の分析によると、政府は香港、台湾、チベット、新疆の4つの分離については同じ原因があるとみている。この4つの地域にはそれぞれ不平分子がいて、それがアメリカと手を組んで社会主義や国家的結びつきを脅かしていると、政府は見ている。そこで、こういった言葉を使うことにより、これら4つの地域の不平分子を締め付けたい、と見ています。また、愛国心をはぐくむのも目的だとも言われています。
親記事リンク:china sets rules for news reports on taiwan hk
中国と台湾、香港との関係
中国と台湾、中国と香港、それぞれ、独特な関係にあります。
まずは、中国と台湾から。台湾は日本による統治ののち、いったん中国の支配下にはいります。その時は、中国の台湾省という位置づけでした。それが、毛沢東との闘いに破れた蒋介石が台湾にやってきて、中華民国を樹立します。その後、台湾の政府は、中華民国(ROC)は中国(中華人民共和国, People Repbulic of China)とは異なる国家であり、中国(China)は2つあるという、「二つの中国」を主張します。当然に、中国は中華民国の正当性は認めず、あくまでも「台湾島」と主張します。このような中国側の主張は「一つの中国」とよばれています。ちなみに、アメリカも日本も、外交的(建前的)には、この「一つの中国」を支持しており、中華民国を正当な国家とは承認しておりません。
なので、記事中も、「ROC」を使うな、ということは、台湾の主権を認めず、あくまでも台湾は中国の一部である、ということを強調したい表れかと推測できます。
次は、香港との関係。香港は南京条約(アヘン戦争の後の講和条約)で、イギリスに割譲され、その後、ずっとイギリス領でした。ついに、1997年7月1日、香港はイギリスから中国に引き渡されました。とはいえ、全て中国の法律や制度を適用したのではなく、一国2制度ということで、イギリス領だった頃の法律や制度を残しております。こうして始まった中国と香港の関係、最初のうちはうまくいっていたようですが、徐々に中国側が香港への支配を強めようとしており、それに対する香港側の反発というものもあるようです。
おそらくですが、中国政府は hand overというと、単に譲渡を受けたような印象を与えるので、resumption、主権の復帰、つまり、もともとは中国側が香港の支配権を持っていて、それが回復した、ということで、香港支配の正当性を強調したい、という意図があるのでしょう。
その他、中国ではチベットや新疆に表れている少数民族との関係もあり、政府としては支配力を強めたいが、他方として支配されるほうとしても言い分のあるところではあるので、なかなか、解決にはいたらないようです。