前2回が基本書的なものだったので、ここでは若干特論的なことを。今、色々と議論されている事業承継。そうすると、事業承継税制、といった、税務論に入りたくなりますが、その前に全体像をつかんでおきましょう。
事業承継、と税務上も色々と論点のあるところです。なので、税務をやっている人は、そちらのほうに飛びつきたくなります。とはいえ、税務に入る前に事業承継というものの全体像、をつかんでおくことが大切になります。
そこで、紹介するのが、「事業承継が0からわかる本」です。この書籍においては、税務的なことももちろんとりあげていますが、その前段として、事業承継の心構えや骨格の話をしています。前段の部分のポイントを本書ではこうまとめています。
”つまり「どのように」という方法論は専門家におまかせいただくとして、社長にお考えいただきたいのは、社長のいすと自社株の2つについて、「いつ」「誰に」「何を」渡すのかということです。これは社長にしか決められないことです。”
そして、この「いつ」、「誰に」、「何を」という部分について章を設けて概説しております。それぞれに留意点があるところで、例えば、「いつ」ことであれば、承継すべき人(これを議論するのが「誰に」です)に対してどのタイミングで譲渡すべきか。あまり、経営能力が身につかないうちに譲渡すると経営が混乱する要因になるし、かといってぎりぎりまで渡さない、というのも問題があるのでは、ということが書いてあります。
その後、「どのように」ということで、具体的な事業譲渡の方法論、特に税務上の検討事項として、どのように自社株の評価額を計算するか、承継する際の負担が大きい場合はどのようにその負担を減少させるか、自社株をどのように渡していくか、ということが書いてあります。
現在、事業者の高齢化ということが進んでおり、事業承継は社会的にも必要とされるテーマになってまいりました。まずは、概要をつかむためにも本書を手に取ってみるといいでしょう。「0からわかる」というだけあって、文章も会話体で馴染みやすく、また、専門用語も少ないので読みやすい、と思います。なにより、事業承継の最初の1歩から書いているので、スムーズに全体像をつかめることでしょう。