中小企業でも知っておきたい内部統制の知識、引き続き統制活動をお送りします。今回は、細かくチェックする、というより、むしろ、上から俯瞰するということで、財務諸表の全体的な分析により財務諸表の概括的な妥当性を確認することをとりあげます。
予算管理、財務分析の意義
予算管理、財務分析は財務諸表の概括的妥当性の検証に役立ちます。本来的には、予算管理や財務分析は会社の経営管理のために行われます。例えば、予算と比べて売上や利益が到達しない場合にその原因を分析する、ことをすることにより過去の振り返りと将来の計画設定を行うことが目的とされます。前期比較等もそうで、前期より増えているか減っているか、それを分析し今後の経営発展に役立てる、ということがあるでしょう。
それと同時にこれらの予算管理や前期比較をすることにより財務諸表の全体的な妥当性を検証することができます。予算より費用が少なかった、これよくよく検討すると費用の計上漏れがあった、であるとか、財務諸表でやたら売上が大きかったのでそれを調べたら実は売上が過大計上されていた、ということも起こりえます。つまり、真面目に予算管理、前期比較を行うことにより、財務諸表の妥当性を同時に検討することもできます。
予算管理、財務分析の限界
とはいえ、予算管理、財務管理では限界があります。まずは、概括的妥当性の検証であり、詳細な検討ではありません。つまり、予算や前期実績等から大きく乖離しない限り発見はできません。少しの誤りだと全体に埋もれてしまう、というわけですね。
また、基準となる数値が妥当でない限り、機能しません。例えば、前期から誤っている、予算がそもそも適当、こういった場合、その数値と比較したところでその差額を分析する意味がありません。そういう意味では、予算のほうが将来のことであり設定が難しいこともあり、前期実績と比べる、ということが確かではあります。
更に、予算の場合、予算の存在が不正を招く恐れがあります。具体的には、売上XX円必達、というと、その金額に達するために売上の先取り、架空計上がなされる余地があります。費用であれば、逆に先送りとか。そのため、予算と整合としている、ということが逆になにか潜んでいる、という観点も必要かもしれません。
社長の感覚との比較
中小企業の方はもしかしたら、予算の設定や管理まで手が回らない、ということがあるかもしれません。そういう場合は少なくとも実績を正確に、早くだすようにしたらいかがでしょうか。おそらく、年度決算は税務申告のためにある程度正確に算出されていると思います。その数値と社長の感覚を照らすとある程度の蓋然性はつかめるでしょう。
ただ、月次や四半期には正確に把握されていない、というケースも多いのではないでしょうか。月次をある程度正確にだし、それと社長の肌感覚と比較してみると、年度で実施するより、より正確に数値(もしくは肌感覚)の検証ができるのではないでしょうか。
まとめ
予算、実績との比較は経営管理だけでなく、財務諸表の概括的妥当性を検証することにも役立ちます。ただ、中小企業の中だと、予算の設定まで追いつかないこともあるかもしれません。そんな場合は、社長の感覚と比較する、という検証手段もあります。