移転価格は難しい、と巷では言われます。ここでは、なぜ、難しいといわれるか自分なりに考えてみました。
独立企業間価格をどう算定するか
独立企業間価格を客観的に計算することが非常に難しいです。公正な市場価額があれば、その価格をあてはめることができそうです。必ずしも、公正な市場価額があるとは限らず、また、親子間取引の場合は第三者との取引とは取引条件も異なってきます。そうなった場合に、どう独立企業間価格を算定するかというのは結局企業の判断で決まる、ということになってきます。
また、この場合、税務当局と企業の判断は乖離することも往々にしてあり、その場合移転価格税制による課税を免れるのは難しい状況となります。
なお、OECD 移転価格ガイドラインでは、いくつか独立企業間価格の算定方法が記載されております。興味がある方はこちらも参照いただくとよいでしょう。
追徴額が大きくなりやすい
移転価格税制は関係会社間の取引に対する税制です。通常、関係会社間では、日々取引が行われており、取引額も大きくなりやすい傾向にあります。また、移転価格税制により指摘されると、数年にわたる取引について追徴されてしまいます。
そうなると、企業間の取引価格と税務当局が独立企業間価格とする金額とする額が多少ずれても、累積すると非常に大きな金額となります。
税額控除制度はない
通常、多国間をまたがる取引に対する課税の場合は、2重課税の防止ということで税額控除という制度が設けられています。
ところが、移転価格税制から生じた追徴税額については、税額控除という仕組みは、通常、ありません。例えば、B国子会社がA国親会社との取引に対してB国の税務当局により移転価格税制に基づき追徴されたとしても、A国側ではそれについて税額控除をとり課税額を減少させることができません。
このように、移転価格税制により追徴された場合は、それを取り返す仕組みが乏しいため、負担がさらに大きくなります。
まとめ
このように移転価格税制への対応は難しいとされます。では、どのように対応するかは項をあらためて考えてみます。