相続税対策、色々と手法があるところです。そのうちの一つとして、不動産を買う、というのがありますよね。確かにそうですが、実際に適用する時には色々と考える必要があります。というわけで、表題のとおり批判的に検討してみます。
この節税策は相続税法における不動産評価に基づき提唱されています。土地の場合、相続税法上、路線価や固定資産評価額で評価するとされています。実は、これらの2つの評価方法は時価(公示価格等)と比べ7~8割くらいになると言われています。建物の場合は、時の経過につれて評価額が下がります。評価額が低いと相続税額も低くなる、ので、評価方法の特徴を生かして節税をするというわけです。
ですが、この不動産、色々と厄介な性質を持っているので注意が必要です。
まず、不動産は分割することが非常に困難なのです。現金や預金を1億円持っていた場合、それを2人で分けるのはそれほど難しくありません。ところが不動産の場合、評価が1億円の土地を分ける、というのは結構難しい。単純に線を引いて分けれればまだいいでしょう。土地の利用形態や形状によってはそれができないというケースも多々あります。そうすると、共有ということになるのですが、共有だと売ったりする場合に共有者全員の同意がいたりするので、処分可能性に問題が出てくる。これは建物も同じです。なので、不動産には分割困難性という問題があります。
次に、考えないといけないのが、不動産の管理は手間がかかります。まず、不動産を持っていると固定資産税が毎年かかります。これが、バカにならない負担です。また、所有者は管理責任があるので、完全にほったらかすというわけにはいかず、例えば草がぼうぼうになったら草刈りとかしなきゃいけないですよね。賃貸物件だと、うまくいっているときはいいのですが、うまくいかない(空室、賃料滞納)となると少し大変です。
さらに、納税資金。不動産単体だと、相続が発生したときの納税資金の問題が生じます。現金であれば、そこから納税資金を捻出できるのですが、不動産の場合はそれができない。そうすると、納税資金を準備する必要がある。資金調達は結構負担になるケースもあるでしょう。不動産を売るとしても、期限のある話なので自分が思った値で売れない可能性もあります。納税においても、延納や物納といった方法もあるのですが、制限も多く手続的に面倒なところもあります。
ということで、相続対策の場合に不動産を買うのは少し注意したほうがいいでしょう。この節税法が機能するのは、財産のうち一部を不動産に変えることかなー、と思います。そうすると、上記の問題点は他の資産でカバーすることができるとともに、節税効果の恩恵を受けることができる。かつ、財産をいくつかの種類で持つことは、ポートフォリオ効果を生むので資産全体におけるリスクを減らすことができるかと思います。逆に、相続財産を全て不動産にすると上記の問題がかなり大きな問題となりあまりお勧めはできません。不動産による節税対策はメリットは大きい反面、デメリットも結構あるので、慎重に対応することが必要でしょう。