さてと、公認会計士が勧める税務を勉強するために読むべき書籍の2回目は「弁護士が教える分かりやすい「所得税法」の授業」です。今回は、会計士や企業の経理の方が少し苦手意識のある所得税を。
この本の著者は木山泰嗣さんと言い、弁護士の人です。そういう方が書かれている本だけあって、まさに「法律の本」という面持でかいてあります。すなわち、各章ともに、条文の引用から始まり、趣旨や制度の説明があり、そこでも曖昧な所がある場合は、判例や事例を引いて説明しています。通常、法律の学び方は「条文」、「趣旨」、「判例」というふうに進むので、それに即してこの本も書かれています。
- そもそろ「所得」が発生しているか(所得概念)
- その所得は誰に帰属するものか(所得の人的帰属)
- 非課税所得の対象となっていないか(非課税所得)
- その所得はどんな種類か(10種類の所得分類)
- その所得はいつ課税されるのか(所得の年度帰属)
- 控除されるものは何か(所得金額・所得税額の計算)
特に、本書で筆が割かれているのが、10種類の所得分類というところ。10も所得の種類があるので、それなりに分量がでてくるだろう、というところと、また所得分類が異なると課税額が変わるので、争いが起きやすい、というところがあるのでしょう。
最後のほうに源泉徴収や青色申告といった徴収手続に関する論点、税務調査、追徴課税、といった徴収制度やその救済について書いてあります。
本書は、通常、所得税の詳細な制度や申告書の書き方、節税策ということがとりあげられることが多いのですが、本当に所得税の基本的な考え方を丁寧にわかりやすく書いた本です。所得税を基本から勉強したいという人は是非手に取ってほしい書籍です。
この書籍の中で通じて流れている考え方が「所得概念」です。つまり、所得とはなんだろう、という、6つのポイントのうち一番最初の概念です。この中で、制限的所得概念と包括的所得概念の2つがあり、最後にその歴史的な経緯が書かれています。
木山さんは本書籍の他、「小説で読む民事訴訟法」、「弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業」等多くの書籍を書いています。前2冊についても、読んだのですが、非常にわかりやすくおすすめです。できれば、他の税目(法人税や相続税)についても書いてほしいなぁ、と思う今日この頃です。