変動損益計算の隠れた前提としての、現時点では100%操業されていない、という考え方

変動損益計算、別の言葉でいうところの直接原価計算という方法について。これは、費用を一般的な財務会計ではなく、変動費/固定費に分けて損益計算を行う、という考え方です。じつは、この計算方法に隠された前提条件があります。それについて書いてみたい、と思います。

それは操業度、ということ。操業度、というのは、現時点での生産力を現有の設備、人員等における最大生産力で割ったものです。つまり、操業度が100%というのが、フルに設備、人員が稼働している状態で、これ以上、生産量を増やすのは難しい、という状態。工場であれば、全ての設備が休みなく動いている、という状態です。

操業度の特徴として、100%になっている状態はあまりないのでは。当然、仕事の量は一定ではなく波があるので、波に対応できるようある程度の余力を残しておくものです。例えば、監査法人であれば3月決算監査が行われる4月~6月は繁忙期なので、それにある程度対応できるだけの人員はそろえておきます。そうすると、7月以降は稼働が減ってしまい、全体としては、100%ということはないんだろうなー、と思います。

ここで、変動損益計算の話に戻りますが、固定費/変動費という議論が成り立つのは、売上の変動によって生じる生産量が操業度の範囲に収まっているときだけです。売上がそれを超えるようになると、人員なり設備なりを増強しないといけなくなり、固定費とされているものも変動してしまいます。

具体的には、操業度が70%の会社があるとします。それが売上が20%と増えた場合は、操業度は14%あがり、全体としての操業度は84%となります。それであれば、現時点での変動費/固定費の関係は比較的保たれたままと考えられます。他方、売上が2倍になった、とすれば操業度も2倍、140%ととなるので、これを達成するためには人員、設備等の生産力を高めないとならず、固定費もあがってしまう、ということになるでしょう。

ちなみに、操業度、という概念も業種によって変わります。例えば、365日24時間稼働の全自動の工場と、人手に頼っているサービス業だとなにをもって100%の操業度と定義するかが変わってくると思います。

まとめると、変動費固定費という考え方は一定の操業度の範囲内で成立する話となります。それを著しく超えると、そもそも売上が成立しないか、固定費が増えてしまう(固定費の変動費化)ということが起こり変動損益という考え方を適用しにくくなるのでは、というのが今回の問題意識です。

 

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