「うちの爺さんはタバコ吸ってたけど100歳まで元気に生きたよー」という言説を批判的に検討する

今回のテーマは一見もっともらしい言説だけどそこに潜む盲点を検討します。表題は典型論点ですが、結構、陥りやすい思考の罠なので、どこに穴があるかあらかじめ把握しておきたいところです。

医学的には、喫煙は体に悪いことだ、ということは定説になっています。これは蛇足ですが、ぼく自身も自分の健康を考えるにあたって、この説によっていることが多いです。

ただ、これに対する批判と代表的なところが、「うちの爺さんはタバコをパカパカ吸ってたけど、結局、80歳まで生きたよー」ということです。そうすると、「煙草は健康に悪い悪い、っていうけど、そんなことないんじゃないー」という反論が成立します。

実例に即した言説で、「一本取られた―」という、思うところもあるかもしれません。たしかにそうだよな、、とも、思いますが、この主張には論理的な欠陥があったりします。

それは、「木を見て、森を見ず。」ということです。つまり、ある事柄や仮説の正確性を、「うちの爺さん」ただ一人の事例で判断しようとしていること。つまり、うちの爺さんが全体を表しているか、それとも例外的事項なのか、わからないですよね。

本当にこの言説を、ある程度の正しさをもって主張するためには、たくさんのサンプルをとって、その中での傾向を抽出する必要があります。そう、確率統計的な手法を使って分析検討する必要があるわけです。この場合だと、100万人くらいを調査して実際どうなのよ、と考えると、ある程度もっともらしい結論が得られるでしょう。

このように、ある特定の事例のみをもって、ものごとの正否を判定しがちです。もちろん、きちんとした調査はできないかもしれませんが、少なくとも、その事例が例外である可能性、ということはふまえておく必要があります。

若干、補足ですが、一つの事例から仮説をつくりあげること自体は悪いことではなく、むしろ知的に生産的な営みとも言えます。ただ、その仮説を検証する、というプロセスが必要で、その時にはより多くの事例を集積することが必要です。

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