ストレーツタイムズからアジアをのぞく(8)~フィリピン、カタール外交危機による思わぬ影響

ストレーツタイムズからアジアをのぞく、8回目の今日はカタール外交危機についてとりあげます。といっても、外交危機そのものをとりあげるのではなく、それがフィリピンに大きな影響を及ぼしている、のでそれについて綴ってみます。

カタール外交危機とフィリピンの対応

6月5日、突如、サウジアラビア、バーレーン、エジプト、UAE等湾岸諸国は、カタールに対して外交断交をつきつけたことである。4か国の言い分としては、カタールはイランと親交し、また、テロリストグループを支援している、ということが断交に踏み切った要因である、としている。この外交危機により、これらの諸国はカタールへの交通網を遮断し、それにともない、カタールでは食料輸入等に支障をきたしている、という状況です。

これにと伴い、6月6日、フィリピンはカタールに対する労働者の派遣をとりやめた。それに伴い、すでに承認を受けた労働者やこれから出発しようとしている労働者についても影響が発生することが予測される。

現在、正式な手続をした労働者が141,000人程度で、その他を含めると200, 000人くらいだと推定されている。フィリピンの労働大臣(Labour Chief)はカタールの外交危機によりカタールに出稼ぎに行っているフィリピン労働者に食料不足などの悪影響が出てくることを懸念している。フィリピン政府としては、カタール外交危機により悪影響を受けたフィリピン労働者に対して支援を拡大する意向があることを表明している。

親記事リンク:philippines halts workers deployment to qatar

フィリピンの出稼事情、中東の受入事情

フィリピン人はよく出稼ぎにいきます。このことが日経新聞の電子版(2017/2/6) では以下のようにまとめられています。

” フィリピンにとって海外で働く出稼ぎ労働者は経済を支える屋台骨だ。人口の1割にあたる約1000万人が海外で働き、家族などへ送金される額は国内総生産(GDP)の約1割を占め、消費を押し上げている。2016年1~11月の外国送金額は243億ドル(約2兆8000億円)で前年同期比5.2%増えた。”

背景としては、国内の産業がいまだ発達しておらず(特に製造業が弱いらしいです)、国内だけでは労働力を吸収できない、ということがあるようです。また、出稼ぎ先のほうがいい給料をかせげる、フィリピン人は英語が比較的得意で英語で話すことに慣れている、ということがあるでしょう。そういったことで出稼ぎに出かけるフィリピン人が多いです。

他方、受け入れ先はどこか、、というと中東各国のようです。特に、産油国(サウジアラビア、UAE、カタール等)では、石油から多くの稼ぎを得ることができるため、建設工事などが盛んにおこなわれております。その、建設工事を誰がするか、というところがまさに海外からの出稼ぎの人が従事している、という背景があります。確か、UAEでは2割くらいが現地人で残りの8割が出稼ぎ、と聞いた覚えがあります(やや前の話なので今は違うかもしれません)。そのうち、何人かはフィリピンの人もいるのでしょう。

このように、このようにフィリピンから中東へは出稼ぎという形で人が流れています。もちろん、この流れの善悪は別途議論されるべきです。とはいえ、短期的には出稼ぎに出れないとフィリピン人も困ってしまうので、早くおさまってほしいものです。このように、複雑に各国がつながっている国際状況のもとでは、どこかで危機が起こるとそれに連鎖して他の国まで波及する、ということがあるようなので、その点にも留意したいものです。

 

 

 

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