旧・現アメリカ大統領から見る、理念型政治と現実型政治

アメリカ合衆国でトランプ氏が大統領になってから4か月程度たちました。その中で、トランプ大統領が国際的な調和より自国の利益を重んじつつ、行動しているのは周知のとおりです。「トランプは傍若無人だ。」というのは簡単ですが、そこには、理念型政治と現実型政治の二つの考え方があろうかと思います。ここでは、トランプ氏が破棄しようとしているパリ協定をもとに考えてみます。

そもそも、パリ協定、前アメリカの大統領である、バラクオバマ氏が主導したでてきたものです。オバマ前大統領はパリ協定発効については、「歴史の転換点)という言葉で、それが成立したことについて喜びの意を示しております(朝日新聞digitalより)。ところが、次の大統領であるドナルドトランプ氏は「中国、ロシア、インドは何も貢献しないのに米国は何十億ドルも払う不公平な協定だ」(2017年6月7日版 Wikipedia)ということで、パリ協定を脱退する意向を示しております。それについて、当然、オバマ前大統領は批判的なコメントを出しています。

同じアメリカ合衆国の大統領なはずですが、どうして、このような違いができてしまったのでしょうか。一つの考え方として、理念型政治と現実的政治という考え方を提示します。理念型政治とは理念やあるべき姿を目指すように政策を立てる政治です。理想を追いかける政治です。他方、現実型政治は理想よりむしろ現実的(特に経済的)利益の追求を追いかける政治です。比較すると、理念型のほうが倫理的な政策をいいます。例えば、日本でいえば、将来のために原子力発電をやめるべきえるのが理念型政治、そうはいっても原発を稼働しないと電力がまかなえないでしょ、というのが現実型政治でしょう。

耳障りがいいのは理念型のほうです。崇高な理念をたちあげそれにむかって努力をする、というのはやはり見ていて素敵なものです。それを支持する人たちは正しいことをしている、という意識が強く、結構、声高に主張します。現実型は経済、とか、軍事とか、あまり大きな声で語りにくいことを対象とします。とはいえ、経済、軍事は生活に直結するだけに関心は高いです。また、理念型の追求により、経済的に弱くなること、もしくは、治安がおびやかされる、ということもあり、それを懸念する人は現実型の政治を支持します。支持者の声は大きくなりにくく、ですが、選挙とかだと結果に強く影響します。

この考え方からオバマ氏、トランプ氏の政治手法を分析すると、オバマ氏のほうが理念型、トランプ氏が現実型といえるでしょう。つまり、オバマ氏は割と崇高な理念を掲げ、国内問題、国際問題にとりくんできました。自由貿易の推進、移民の推進、国民皆保険、そして、今回のパリ協定成立、まさに理想をあるべき政治を追求している、ということです。ところが、アメリカ国民のうち、多くの人々はこのような理念型の政治をよしとしなかったということがあるでしょう。やっぱり、製造業への打撃、テロリストの流入容易性、皆保険による負担増の回避、環境問題への費用負担増、など、経済的に負担が多いことになりました。そういった、人たちの心には、トランプ氏の主張するアメリカファーストが快く響いたのであり、結果として、トランプ新大統領の誕生、ということになったのでしょう。

日本だと、「トランプはけしからん。」とか、「傍若無人だ。」といって批判します。確かに、日本人としては、アメリカ合衆国のような強大国が自国の利益のみを行動するのは、勘弁してほしい、というのはありますし、それは私も同意します。とはいえ、トランプ大統領は現実的政治を強く志向し、かつ、それを支持する人たちも多い、ということを決して忘れてはいけません。そんなトランプ大統領に渡り合うためには、日本国のとる外交について今まで以上に慎重になる必要があるのではないでしょうか。

海外事情/語学