国際税務についてまとめてみました、シリーズもかなり長くなりました。今回は、過小資本税制について考えてみましょう。
過小資本税制とは
過小資本税制とは、親会社から海外子会社等に貸し付けにより資金を提供した場合、貸付額がある一定の範囲を超えた場合当該貸付金にかかる利息については、損金に含めることはできない、という制度です。
過小資本税制の意義
これは、海外子会社に対する資金提供の様態を変えることによる課税所得の減少を防ぐ制度です。親会社が海外子会社に対して資金の提供方法としては、出資による方法と貸付による方法の2つがあります。
通常は、出資と貸付は資金の性質や資金提供に対する対価の支払い方法(つまり配当か利息か)が異なるので状況に応じて使い分けます。ただ、親子会社の場合はある程度融通が利くところがあり、本来は出資として出すべき資金を貸付という形態をとることが可能です。貸付の場合は、利息を支払うことになり、その分課税所得は減ります。これをうまく使うと、税率が高い海外子会社においては貸付を増やし支払利息を計上することにより、企業集団全体の税金を減らすことができそうです。
国家としてはこれは困るため、過小資本税制を設けて必要以上に利息を計上できないようにしています。
過小資本税制の傾向
過小資本税制の場合の救いは、割と明確に数値基準が決まっていたりします。「独立企業間価格」という抽象的な決めの移転価格税制とはその点で若干異なります。また、全ての国が適用しているわけではないようです。ただ、日本では残念ながら過小資本税制はあります。概要はこちらのサイトをご参照ください。
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/international/179.htm
まとめ
親会社からの貸付を多くして支払利息を増やして課税所得を減らそうとしてもそこには一定の歯止めがかかるようです。数値基準は割と明確な場合が多いため、そこが救いといえば救いでしょう。