さて、前回は移転価格の難しさ、ということをまとめました。では、どう対応していくか、考えてみたいと思います。
関係会社間価格を合理的に定める
まずは、スタート時点はここ、関係会社間価格を独立企業間価格にできる限り近づくように設定する、ということがあります。
そのための価格設定の考え方はいくつかありますが、そのうちの一つとしてリスクを負担している企業が大きな利益をとる、ということがあります。例えば、現地法人で親会社の指示に基づき生産しほぼ100%の製造量を決まった価格で引き取ってくれる、といった場合、当該現地法人は販売、在庫リスクをあまり負いません。そのような場合は、現地法人ではあまり大きな利益はでないように価格を設定することになります。他方、現地法人が生産した製品について必ずしも親会社が購入するとは限らず、また親会社以外にも販売できる、となった場合、当該現地法人が販売、在庫リスクを負います。その場合は、現地法人でもある程度利益が獲得できるような価格とします。
このように、リスクと利益と見合うように価格を設定する、というのが考え方があります。他にもいくつかあるのですが、それはここでは割愛します。
文書化する
次に、設定した価格についてそれが独立企業間価格であることを説明するような資料を整備することが考えられます。そして、税務当局が調査等に来た場合、その資料をもって独立企業間価格であることを説明していくことになります。もちろん、見解が必ずしも一致するとは限りませんが、価格の説明資料があればその分納得させやすくはなります。
文書化については、国によっては義務化されているところ、されていないところとあります。ただし、趣旨を考えると関係会社間の取引が大きい場合には、強制されていなくても対応しておくことが望まれます。
相互協議
租税条約で相互協議の条項を設けている場合、移転価格について相互協議に持ち込むことも考えられます。相互協議とは、企業がとある課税事象について国家間の調整を求めることです。例えば、関係会社間の取引価格について事前に対象国間同士の相互協議を依頼する、事後的に移転価格に関する追徴分に対する調整を依頼する、ことがあげれられます。
ただ、複数の国家を巻き込む調整となりますので、ある程度規模の大きさが求められる、時間がかかる、望んだ結果がでるとは限らない、などの限界はあるようです。
まとめ
移転価格についてはいくつかの対抗策が考えられます。ただ、上記はかなり専門的な検討が必要となるので、本気で対応する場合には専門家を巻き込むことが必須であると考えております。