企業内で、時折、不正が行われることがあります。不正といえば、粉飾などの会社ぐるみで行われるものと、横領のように個人レベルで行われるものがあります。中小企業の経営者としては、横領のような個人不正のほうが気になるところでしょう。どちらにしろ、会社もしくは関係者に非常に大きな影響を与えます。このような不正について要因と防ぎ方をまとめてみました。
不正のトライアングルとは
不正のトライアングルとは、RDクレッシーという米国の犯罪学者が研究により構築した理論です。この理論は、機会、正当化、動機の3つがそろった時に、不正が発生してしまう、というメカニズムを考察しています。1つの項目を全て0%にすることは難しいので、それぞれの要因を弱めていくということが必要となります。以下はそれぞれの観点について検討していくことにします。
機会
機会は、不正なことをしようとすればできてしまう環境に遭遇することを指します。つまり、不正な行為に対する管理や内部統制が弱いような場合ですね。
例えば、経理財務が一人しかおらず、伝票の起票及び入出金が自分ひとりでできてしまう、という状況を考えてください。この場合、この人が伝票を適当にいじって、それに基づき不正に自分もしくは自分の関係者の口座に会社のお金を振り込む、ということが考えられます。別の事例としては、倉庫に鍵をかけずまた商品の帳簿をつけていない、という場合であれば、その商品を勝手に持ち出せてしまいます。
このように、不正をする機会があると、不正が起こりやすくなります。
防止方法
不正の発生確率を下げるためには、機会を減少させる必要があります。つまり、会社側で管理を強化して不正な行為を行わせないようにする、ということがあるでしょう。
上の事例でいうと、伝票の起票と入出金の担当は分ける、入出金の際には別の承認者を設ける、ということがあります。また、在庫の例だと、倉庫に鍵をかける、門番を置く、帳簿を付ける、ということがありますよね。
このように、管理体制を強化することにより不正の機会を減らし、防止することができます。
その人を信じているというけれど、、
こういう話をすると、「いやいや、うちの○○さんに限ってそんなことはしない。」というような反論を受けることがあります。そのため、特にこんな厳重な管理をする必要はない、ということですね。後述するように、機会があったとしても、動機がなかったり、正当化の要因が少なかったりすると、不正は起こりません。
ただし、いつその人に動機や正当化が発生するかはわかりません。例えば、その人が病気にかかってお金が必要になったとしましょう。そのとき、管理が甘い、つまり不正の機会があればどうなるでしょうか。その場合、ふと魔がさしてその人は不正を犯してしまう可能性があります。
不正をすることにより、もちろん会社は損害を被りますが、不正を犯したひとも傷を負います。それには不正が発覚したことによるペナルティもありますし、その人の良心の呵責もあるでしょう。そのようなことが起こさせないためにも、その人を守るためにも管理を強化し不正を防止する必要があります。
まとめ
不正の要因として機会、動機、正当化というものが挙げられます。機会があると不正を誘発しやすくなります。そのため、管理強化等により機会を減らすことが大切です。正当化、動機については、次回以降とりあげます。