たまには演劇を見にいこう!(3) ~青年団「冒険王」観劇記

先日は、平田オリザさんが主宰する、青年団が催す「冒険王」という演劇を見てきました。実は、私自身もバックパッカーだったこともあり、非常に楽しみにしていた舞台でした。

時代背景/舞台設定

時代背景は1980年代。イラン革命や韓国の光州民主化運動があった頃です。ソ連のアフガン侵攻はもう少し先の話となります。

舞台は、トルコにあるバックパッカー宿のドミトリーの1室。ドミトリーには2段立てのベッドが3つあり、1段のベッドが一1つあります。また、部屋の真ん中にテーブルがあります。

登場人物はバックパッカーをしている人がほとんどですが、時には、バックパッカーの方の奥さん、女子大生旅行者等のバックパッカー以外の人々もでてきます。

バックパッカー宿の光景

この舞台、まさに、バックパッカー宿の日常を切り取ったような作りになっていきます。

まず、バックパッカーたちの旅行歴の長さ。短くても3か月は旅にでている。そして、特になにをするのではなく、のんびりと時がすぎさっていく。その独特の時の流れはバックパッカー以外の人だと共有できない、ところがあるでしょう。

日常のように繰り返される出会いと別れ。結局、バックパッカー宿というのはかりそめの宿にすぎないわけで、機がくれば、そこから離れてしまいます。かといって、旅をしていると再開することもあるというそのつながり。バックパッカーは当たり前のように出会いと別れを繰り返しているように見えますが、やっぱり、寂しさというものを感じたりするのですよね。

その他、日本語の本や情報に対する飢え、バックパッカー同士の情報交換、バックパッカーの間のつながり、時には宿で自炊したりし、それをみんなで一緒に食べたり。帰国へのあこがれと不安。もちろん、滞在国でどうやって安くすませるか、というものがあります。

異質なものを混ぜてみる

この作品が演劇たらしめているのは、バックパッカー以外の人が宿を訪れること。そうした、異質の人たちを宿に入れることにより、よりバックパッカー宿の特殊性/閉鎖性を浮彫にしています。

まず、最初にやってくるのが、バックパッカーを引退しようとしている人の婚約者(女性)。旦那のほうが、バックパッカー仲間と盛り上がっているのですが、それについていけていない。その次は、バックパッカーの奥さん。なんとなく、宿中に気まずい雰囲気が広がり、宿泊者はみんななにかしらの理由を付けていなくなってしまいます。そのあとは、女子大生旅行者2人。旅行者であるため、前の2人より属性はバックパッカーに近いのですが、微妙な乖離があります。

そして、最後にやってくるのが、イランからやってきたバックパッカー夫婦。この人たちがやってきたときの、他の宿泊者の歓迎の様子と言ったら。バックパッカーの仲間意識、連帯意識が明確になる瞬間でした。

このように、このお話では、バックパッカーでない人たちを登場させることにより、バックパッカー宿らしさを強調しています。実際は、バックパッカーの奥さんが旦那を探してやってくることは考えられないので、非日常的な状況といえます。むしろ、バックパッカー宿自体が非日常的な存在なので、そこに日常を混ぜた、というところでしょうか。

まとめ

私自身も旅行は好きで、ここで書かれているようなバックパッカーに会ったこと、バックパッカー宿に泊まったこともあります。そういった意味で懐かしい想いをいだきながら、見ていました。この舞台の面白味は、バックパッカー宿をリアルに描きながら、そこに異質の人を混ぜ、よりリアルにしてている、ところにあるのでは、と思います。

 

 

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