引き続き、国際税務のお話を。前回は租税条約について書いたので、今回はその補足として租税条約の対象を検討してみます。
対象となる税目
大概の租税条約において対象となる税目は所得にかかる税金となっております。日本の場合であれば、法人税、所得税(住民税が含まれる場合もあります)がだいたい対象です。諸外国でも、通常は所得に関する税制はあるため、こちらが租税条約の対象となります。では、他の税目はなぜ対象とならないのか、少し、考えてみました。以下は完全な私見となります。
関税は?
関税は、通常、租税条約では規制されません。関税については通関の際にかかるものです。通関は1か所からしかなされないので、国家間で2重に課税されることはないはずです(輸出税を取る場合は別ですが)。もちろん、物品をA国、B国、C国と運んだ場合にはB国とC国で関税が発生するのですが、これを回避するのは企業側の対応できるのではないかな、と思います。
また、関税は通常、自由貿易、貿易協定の枠組みで議論され、規制されることが多いので、租税条約で規制する必要はないのではないでしょう。この辺は専門家ではないので、議論をひかえることとします。
付加価値税は?
付加価値税、日本でいうところの消費税、(実は、消費税というより付加価値税というほうが、税の内容に即していると思いますが、これはここでは論じません)も租税条約の対象とはならないことが多いです。
これは、おそらく、付加価値税は一国の中で閉じているからだと思います。例えば、A国からB国へ物品が輸出される場合、通常、A国では輸出行為に相当するため、A国における付加価値税は免税されます。他方、B国では輸入付加価値税がとられることが一般的です。そうなった場合、A国では免税、B国では課税であるため、租税条約の目的である2重課税の回避はすでになされていることになります。
印紙税は?
印紙税は、契約書が実行された箇所で課税、となっているケースが多いです。例えば、A国で作成されても、最終的なサインが終了した場所がB国であれば、A国では印紙税は課税されずB国では課税されます。ちなみに日本の場合は以下のような取扱いのようです。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/inshi/06/02.htm
まとめ
租税条約の対象税目は主に所得に対する税金となります。これは、やはり所得に対する税金が最も2重課税がなされる可能性が高いからでありましょう。